「ATM婚」という言葉をご存じですか?
以前ネット上で話題になったnote記事で使われました。いかにもSNSでバズりそうなワードですね。
でも、記事をよく読んでみると、この主張は間違っていると感じました。
明らかに偏った主張です。
この記事の内容
- ATM婚とは何か?
- 「ATMにされたくないから結婚しない」はウソ
- 結婚しない男性の本音
- 間違った情報に踊らされてはいけない
note記事では「男性が結婚に消極的になった理由は、女性が経済的メリットばかり追求するようになったのが原因」と主張されています。
でも、原因はそこじゃないと思うのです。
もくじ
ATM婚とは何か?
すももさんという方がnoteで書いて話題になりました。
「ATM婚」とは、経済的メリットを重視して婚活する女性(またはその傾向)のこと。
「男をATMとしてしか見てない女性が増えてきた」って意味だと思われます。
ATM婚とは
婚活において「経済的メリット」を追い求める女性(の傾向)のこと
最初の疑問。そんな人いるんですか?
ネットの婚活市場には一定数いるのかもしれませんが、一般社会でお目にかかれる確率はけっこうレアな生物(失礼)なんじゃないかと。
記事の概要
「ATM婚note」の趣旨は
- 婚活サービス(相談所、アプリ、イベントなど)では女性の方が意欲的
- 結婚に対して「心理的メリット」より「経済的メリット」を重視する女性が増えた
- 経済的メリットを追求する傾向を「ATM婚」と呼ぶ
- 「ATM圧」によって男性が結婚に消極的になっている問題
こんな感じで展開されています。
(日本は共働き意識が低い女性が多いこと、安価な娯楽の普及で男性が寂しさを感じなくなっていることなども同記事では言及しています)
結婚に「経済的メリット」を求める女性が増えた?
女性が「心理的メリット」より「経済的メリット」を求めるようになった理由は、高学歴化とリスク回避思考にあると推察されています。
それにより、婚活サービスは「今やハイスぺ男の狩場と化してしまった」とのこと。
このように女性が婚活において「経済的メリット」を求める傾向を「ATM婚志向」と名付けたい。婚活が着々と浸透する中、街コン、スマホアプリなど様々な婚活サービスが登場した。「ATM婚志向」の女性にとっては安価かつ手軽に男性を探せる環境になったのである。
すももさんのnoteより
この記事(以下ATM婚note)には賛否両論いろんな反応がありました。
いいねの数は、900近く。(2019年9月現在)
「ATMになりたくないから結婚しない」は正しくない
ここからぼくの意見です。
「ATM婚note」では、相手(パートナー候補)に経済的メリットを求める女性が増えたことが「男性が結婚に消極的になっている原因」と書かれています。
でも、その主張は間違っていると思います。
男性が結婚に消極的なのは「別の大きな原因」があります。
根拠 ①
反論の根拠として、まずは下のグラフを見てください。
「出生動向基本調査・独身者調査」 において「結婚することに利点があると思う」と答えた割合の推移です。(「ATM婚note」から引用しました)
noteでは、この表から
- 女性が結婚に積極的になり
- 男性が消極的になっている
と導いています。
表を見ると、女性は7%上がり男性は5%下がってます。
でも、両端の期間は30年。
「30年間に5%の変化」って計測誤差の範囲じゃないですか?
これで「結婚に消極的な(利点がないと思う)男性が増えている」と一概に判断することはできないですよね。
この表から判断する限り、女性のポイントが上がっているので、相対的に差が生まれているように見えるだけです。
根拠 ②
次にこのグラフ。「結婚の利点と思えるもの」男女・時代別の推移です。
結婚に「経済的な余裕」を求める女性の増加率は20年前と比べて10%ほど。
でも全体としてはマイノリティ(少数派)です。割合としては4番目で、下から数えた方が早い項目でもあります。
いちばん多い項目は「自分の子どもや家族を持てる」で、女性の回答した割合は15%増えています。
全体的な数でも「子ども・家族」と答えた人は「経済的に余裕が持てる」と答えた人よりも倍以上多いです。
データから分かることは「2極化」だけ
これらのグラフを見て言えるのは、「日本人の結婚に対する意識で二極化が進んでいる」ということだけだと思います。
結婚して子どもを持ちたい(けど、なかなか叶わない)という「多数派」と、
結婚するなら経済的メリットを最大限に享受したいという「少数派」にです。
「(経済的メリットを志向する女性)が増えたから男性が結婚に消極的になっている」グラフはそんなこと表していないと思います。
間違った認識が広まる危険
問題なのは、男性の世界観として「世の女性の大半がお金持ち男性をゲットしたい女性なんだ」と思っていたら、結婚に嫌気がさしてしまう恐れがあることです。
間違った情報によって判断を狂わされているのです。
結婚できない男性の本音。
たしかに、結婚に消極的な人は増えているのでしょう。
男性に増えたと書かれていますが、女性との意識の差はそれほどないと思われます。
そして、男性が結婚に消極的になる理由は「女性からのATM圧」ではなく別の理由があります。
「結婚したくない」のではない
そもそも、多くの男性は結婚に消極的ではないと思います。
できることなら結婚したい、と思っている男性の方が多いはずです。(ぼく自身や友人の男性の多くはそうでした)
ぼく自身も「いい相手がいれば結婚したい」とずっと思っていました。(37歳で結婚しました)
男性が結婚しない(できない)理由の多くは、
- そもそも相手がいない
- 女性と関係を深めていく術が分からない
- 収入の少なさが不安(非正規労働者など)
女性側にも同じことが言えるのではないでしょうか。
「お金を搾り取られたくない」ではなく
「搾られたくてもお金がない」のです。
結婚に経済的安定を求める理由
女性が結婚に「経済的な安定」を求めるのは、自分の収入だけで生活することに不安があるからでしょう。(単に働きなくない人もいるかもしれませんが)
それって男性も同じです。
自分の収入だけで今後の生活費を賄っていくことに不安があります。
男性が結婚したがらないのは、経済的な不安要素が大きいです。
「ATMにされたくない」ではなく「ATMにもなりたくてもなれない」のです。
潤沢に引き出されるお金があるのなら、どんどん引き出してくれてかまわない。
でもお金がないのです。
まとめ
「ATM婚」はバズり狙いで考えられたワードでしょう。
たしかにインパクトがあります。
でも、事実を歪曲させる「間違った言葉」。
「女性が結婚に経済的なメリットばかりを求めるから男性が結婚したがらなくなった」は間違った構図です。
- 経済的な安定を求めること
- お金を引き出すことが目的
では、意味がぜんぜん違います。
結婚生活に経済的な安定を求めるのは当然で、それは女性だけじゃなく男性も同じです。
安心して暮らせる収入が得難くなっているのは、社会の問題です。
結婚相手に経済的なメリットしか求めない(かなりの部分を占める)志向を「ATM婚」と名付けていますが、そういう女性は全体からすると少数派なはずです。
少数派の存在観を誇張しすぎると、現実の世界認識に「溝」ができます。
その結果「めったに出くわさない猛獣を恐れて外に出ない状態」を作り上げてしまう危険性があります。
それは誰にとっても不幸な世界です。
多くの女性は(男性も)「結婚は幸福なことで、子どもを授かることは素晴らしい」と考えています。
そのへんの価値観は昔から変わっていない、というより、昔よりも強くなっている感じさえあります。
偏った情報に踊らされて、間違った進路を選ばないように
というのが、ぼくの伝えたいメッセージです。
おわります。